七変化（2017.3.5更新）

冬が、長い影を引きずって向こう側へ行ってしまった。
いつの間にか隣でくつろぎだした春とは、今年もうまくやれそうにない。
芽吹く生命、輝き出す世界と隣接した、至極虚ろな空気が、すべてを曖昧にする。
閉鎖的で寒い冬の方が、生きている実感が湧くのは何故だろう。

＊

わたしは、唯心論者とまではいかないけれど、根っからの精神主義でね。
気持ちだけではどうにもならない事があると、身をもって体験した今ですら、精神力がすべてだと信じている節がある。

それでも、なるほど、これは環境が先立って気持ちを動かしたんだなと思える事をいくつか発見して——ニワトリが先か卵が先かという類の話の気もするけれど——、とても面白いと思った。
中には、前回書いたような受け入れ難いものもあるけれど、今回は少し違ったものを書き留めたい。

＊

スマホの無い生活がとても好きになった。
もともとそこまで依存してはいなかったけれど、こんなに離れることが出来たのは、やはり環境の力が大きいと思う。

最初は口寂しいと言うか、物足りないような気もしたけれど、触れない環境に慣れるしかなかった。
でもそのおかげで、余計な事——他人だけでなく自分をも貶める可能性が高い、絶望的な弱音——を、惰性的に発信しなくて済んだの。
これは本当によかったと思ってる。今となってはね。

自分の中で知らないうちに育っていた色んな強迫観念にも、気づくことが出来た。
便利で手軽じゃまずい事、わからない方が面白い事、当たり前では怖い事が、実感としてわかったって言うのかな。
健全な人づきあいをするため、健康を保つために必要なもの、欲しいと思いながら拒んでいたみたい。

“あってもいいな”から“絶対欲しい”になったのは、ひとりの時間。
これは、出来る事なら常に誰かと時間を共有していたい、するべきだと思っていたわたしとしては、大変な変化なのよ。
でも意外と、立役者は本かもしれないな。
言葉や文章はもともと好きだったけれど、それとは違う喜びが、読書と言う行為に詰まっていたんだ。

、、、こうして書き進めると、人との交流断つの最高！と聞こえるかもしれないけれど、そんなことはもちろんないのよ。
出家の予定もないから安心して。笑

でもそうだな、もうちょっとライトに、趣向的な類いだと、シラフの気持ち良さを知ったね！
いや、うん、大分語弊があるから、お酒を飲まない楽しさ、と言い直そう。笑
まぁご存知の通りお酒は好きな方だったから、ほぼ永久的な禁酒令が出された時にはショックだったけれど、お酒を飲みたい——あの酩酊感を快感と呼びたい——という気持ちは、どこかへ行っちゃった。

それから、なぁんと甘いものが好きになっちゃったんだよ。
まいったよね、「言えずじまい」が歌いづらいったら。これでコーヒー好きになったらもう歌えないよ！笑
でもほんと、日に一度は何か甘味が食べたくなるし、昨日もらった和菓子もすごく美味しかったんだ〜。
なんだっけ、もちっとしててね、なんか中身がとろっとしてて、あんこが、えーっと、なんだっけ名前。。

あと、なぁんと続きで、桃色に惹かれるようになっちゃったの。いわゆるピンクよ、ピンク。
これまでほとんど気持ちを動かされなかったのに、何かと選んでしまう自分が不思議で仕方ない。
この歳で、いよいよ女性らしくなってきたかしら？
遅いったらないね。笑

＊

とまあ、お察しの通り、少しずつ元気になっています。
そう言葉にできる程度に、実感もあるの。
出来ることが増え、したいことが増え、日々の喜びも増えていってる。

だけど、戸惑うことも多い。本当に。
だからもう少し、自分と話をしながら、まずは身体を立て直すことに力を注ごうと思います。

わかっているのは、人生は一度きりだということ。
時間には限りがあって、後退は出来ない——あるいは過去を無かったことには出来ない——ということ。

再会がいつになるか、どんな形になるかも伝えられないけれど、
決して悲観的でなく、楽観的でもなく、現実的に前に進んでいること、伝えておくね。
 

2017.3.5 玲